通称名に改名する上で、通称名の使用実績は重要となる証拠です。
改名の条件にある「永年使用」なら必須の証拠となります。
この通称名の使用実績はどのようにして作ればいいのでしょう。
日本人に対して、通称名の使用に関する法律上の規定はありません。
しかし、通称名を使える範囲は限定されるのが現状です。
さらに、通称名を使う範囲によって、違法となりうる場面もあるので注意も必要です。
ここでは通称名に改名するために、通称名がどこまでの範囲で使えるのか、許可されるための通称名の使用実績の作り方や注意点をまとめています。
通称名の使用実績が必要な改名の条件
基本的に通称名の使用実績が必須なのは、永年使用を理由に改名する方です。
永年使用で改名する条件は「通称名を永年使用したこと」なので、長期的に通称名を使用した事実の証明に通称名の使用実績が必須です。
永年使用とは違う改名の理由だと、申立てに通称名の使用実績が必須というわけではありません。
このあたりは家庭裁判所の判断で異なるので一概に言えないのですが、永年使用とは違う理由での改名でも「通称名の使用実績を提出して下さい」と言われることもあります。
しかし、忘れてはいけないのは、改名の許可で重要なのはあくまでも「改名が必要な正当性」です。
そのうえで、改名を必要とする証拠の一つに通称名の使用実績があるだけ。
あなたの改名が永年使用とは違う理由なら、その理由に合った証拠が最重要です。
日本人が改名で通称名が使える範囲
改名の申立てで証拠として使う通称名の使用実績は、どんな場面で作れるのでしょう。
通称名が使える範囲は見方によれば広いかもしれませんが、日本人が社会的に使える範囲はかなり限定されます。
通称名が使える範囲は変わる
通称名が使える範囲に関する規定がないため、通称名が使えるかどうかは、担当者や各機関の判断によります。
上手く交渉すれば通称名が使える範囲は広がるので、人によって使える範囲が変わるということが言えます。
わかりやすいのは、性同一性障害を理由にした通称名の使用です。
2017年8月31日付けで、厚生省が保険証への通称名の記載を認める通知をしています。
この場合も強制ではないので、性同一性障害が理由でも通称名の記載を拒否することはできますが、それ以外の人よりは通称名が使える範囲が広くなります。
本人確認が不要な範囲
通称名が使える範囲に明確な規定はないですが、今は昔のように誰でもどこでも通称名が使えるような時代ではありません。
外国人なら通称名の登録制度があるため公的に使用できますが、日本人の場合は本人確認が不要な場面に限られます。
どんなものが通称名の使用実績になるのか詳細は後述していますが、通称名が使える範囲は基本的にプライベートの範囲や誰でも偽名が名乗れる場面。
年々個人情報の取り扱いが厳しくなっているので、公的機関や公的書面はもちろん、社会生活で実際に本名ではない通称名が使える場所がほとんどない状態です。
役所、病院、銀行、学校などの公的機関の範囲はもちろん、クレジットカードや携帯電話などの契約など「本人確認が必要な範囲」は原則として通称名の使用ができません。
たとえ改名という切実な理由があったとしても、通称名のが使える範囲として、公共機関、金融系、契約などは全滅です。
履歴書に通称名を書く場合も、状況によって直ちに違法とはなりにくいですがグレーの範囲です。
会社や担当者の受け取り方によって、対応が大きく変わります。
改名の証拠となる通称名の使用実績
日本人で通称名が使える範囲が何となくイメージできたでしょうか。
では実際に改名の証拠となる通称名の使用実績がどんなものがあるのか、ということですが以下のようになります。
- ネット通販の伝票
- ポイントカード
- 手紙などの郵便物
- 定期券
- 趣味などの会員証
- 給料明細
- 名刺
- 成績表や卒業証書(卒園証書)
- 社員証(勤務証明書)・学生証
上記が一般的に改名の証拠となる通称名の使用実績です。
現実的に通称名が使える範囲はこのようになります。
こうやってみると、通称名が使える範囲は意外と広いように感じますね。
上5つは、比較的誰でも通称名が使いやすい場面です。
ポイントカードは通称名の使用実績を作る際の定番中の定番ですが、今はネット登録が増えているのでポイントカードを作るのも難しくなっています。
現状として、定期券は自動券売機なら通称名が使えますが、これも将来的にどうなるかわかりませんよね。
郵便物のように通称名が誰でも使える範囲から使用を始めて、少しずつ証拠を作りましょう。
学校は高校や大学となると通称名が使えないことがありますが、義務教育の期間はほとんどの学校が認めてくれます。
改名が許可される使用実績の期間と作り方
通称名への改名が許可される使用実績の作り方は、5つのポイントを意識しましょう。
使用実績だけでなく、他の証拠を作ることもお忘れなく!
通称名の使用期間
- 一般平均で最低5年~10年
- 子供は1年~3年程度
通称名の使用実績を証拠とする場合、通称名の使用期間は長ければ長いほどいいです。
永年使用はいうまでもなく、長期的な期間が必要です。
通称名を使っている期間が長いと、それだけ通称名の通用度合いが根深くなり、改名が許可されるための十分な証拠(使用実績)も用意できます。
年齢により通称名の使用期間が変わり、大人よりも子供の方が短い期間で許可される傾向です。
永年使用とは違う理由での改名なら、あまり期間は重視されませんが、ある程度の使用期間はあったほうがいいでしょう。
通称名の使用実績は日付を残す
通称名の使用実績は、なるべく日付がわかるものを用意します。
いつから通称名を使用しているのか、使用期間がわからないと証拠として認めてもらえないことがあります。
許可されやすい通称名を使う
難読な通称名への改名はかなりハードルが高いです。
難読な通称名とは、人名用漢字に使われていない名前や、当て字で読めない名前です。
改名を希望していないなら、難読な通称名を使用することは問題ありません。
しかし、改名するとなると、過去に難読な名前への改名が却下された判例があるので、難読な通称名への改名は許可されないでしょう。
難読な名前は改名を必要とする理由にもなるため、難読な通称名は何度も改名するリスクあるので、そのような名前への改名を許可することはほぼありません。
徹底的に使用実績を作る
家庭裁判所によって、何を証拠と認めるのかが違います。
あらゆる場面で通称名を使用した使用実績を作りましょう。
とくに永年使用での改名は、本名が通用しない状況が重要です。
本名で登録されているものがないくらい、徹底的に広範囲で通称名を使用しましょう。
改名の理由も判断材料になる
永年使用を理由に通称名へ改名する場合、そこまで改名したい理由が重視されません。
「通称名を長期間使用することで本名が通じなくなった」このような状況だと許可されます。
しかし、姓名判断のように改名の動機があまりにも個人主観が強い理由だと、永年使用での改名も厳しくなります。
このあたりは過去の判例を見てもよくわかります。
通称名の使用実績を作る注意点
- 公的な書類に使わない
- 本人確認が必要な落し物を取り返せない
- 事情を知らない人に通称名だとバレた時に悪い印象を与える
通称名の注意点として使用範囲がどこであれ、通称名で作った物を紛失した場合は、返金ができない・取り戻せない可能性があります。
また、名前は対外的な信用問題になるので、社会生活で戸籍名(本名)ではない通称名を使うことで予期せぬトラブルになりかねません。
あなたの事情(改名など)を知っている人なら別ですが、教えてもらった名前と本名が違うことがわかれば、相手はあまりいい気はしませんよね。
改名していない限り、本名と通称名の使い分けがどうしても必要なので、どの範囲で通称名を使用するにしてもあらゆるリスクがあります。
通称名を使う上でとくに履歴書や契約書などの公文書への使用は要注意です。
戦略的に証拠を集めて改名する方法もあるので、下記を参考にしてください。
改名の証拠「通称名の使用実績」と使える範囲のまとめ
通称名が使える範囲は広いですが、現実的には限定された場面での使用となります。
個人情報に厳しい今の時代では、そう簡単に通称名が使えることはなく、使用実績を作るのが困難になっています。
それでも通称名が使える場面はいくつかあり、郵便物なども改名の証拠となるので、できる範囲で積極定に通称名を使いましょう。