性同一性障害を理由にした改名は許可されやすい改名理由の一つです。
申立書の改名理由の書き方は迷う部分もありますが、書き方を公開されている方がいます。
ここでは、ノンバイナリーとFTMの方で改名が許可された申立書の書き方の記入例をまとめています。
MTFの方も参考になるかと思います。
性同一性障害の改名は理由の書き方と証拠資料が重要
性同一性障害を理由に改名が許可されるためには、申立書の書き方が重要です。
しかし、性同一性障害や性別違和という理由の根拠となる証拠資料もかなり重要です。
証拠資料は必須ではないのですが、証拠資料が何もないと却下されることがあるからです。
- 通称名の使用実績
改名する名前を使用した証拠
(通販の伝票・領収書・給料明細など) - 性同一性障害・性別違和の診断書
ガイドライン準拠の診断書もしくは即日診断書
基本的に改名が許可されるためには、申立書の書き方(理由・事由)とその証拠を用意しましょう。
通称名の使用実績はいくらでも工夫ができ、何も証拠がなくてもすぐにでも作れるものもあります。

診断書は即日診断書があり、その名の通り即日で診断書を発行してくれる病院があります。
性同一性障害や性別違和の方の中には、性別を変えたい方、治療を望まない方、性自認が男性でも女性でもないノンバイナリーの方もいます。
どんな方であっても性別に違和感を持っていれば、そのことを医師が判断すれば診断書が発行されます。
即日診断書は注意も必要ですが、性同一性障害や性別違和を理由にした改名の有力な証拠資料となります。

性同一性障害で改名許可される理由の書き方のコツ
- 性別と名前の不一致による支障の内容
- 性同一性障害を理由に通院していること
- 性同一性障害に関するホルモン治療や手術の有無
- 名前を変更することによる社会的混乱がないこと
・男性名(MTF)・女性名(FTM)であることで精神的苦痛や本人確認に支障をきたす
・治療や手術により身体的に女性化・男性化することで戸籍の名前が通用しない
・名前と見た目が違うことで周囲に混乱を招く
・いつから通院しているのか
・診断が下りているのか
(カウンセリングの進行具合)
・どこまでの治療や手術を行っているのか
・未治療で将来的に治療の予定がある場合はそれを書く
・改名する名前を通称名として使用していること
・通称名がどれだけの範囲で使用し社会的に認知されているのか
・望みの名前や性別で過ごしていること
性同一性障害の改名は名前による支障がわかりやすく、比較的、申立書の改名理由が書きやすいです。
どのような支障があるのか、通院していることや治療により改名の必要性が高まること、改名後の新しい名前をすでに使用しており周囲の理解があること、名前を改名しても混乱が生じないことなどがわかるように書きます。
性同一性障害も性別違和(トランスジェンダー・ノンバイナリー)も、申立書の書き方はそこまで変わりません。
申立書の改名理由の書き方のコツをまとめると、簡潔ですが下記のようになります。
申立人である私は●年●月●日から通院しており、●年●月●日に性同一性障害の診断がおりています。
私は自分の性別を女性(男性)と認識しているため、男性(女性)を表す戸籍の名前を使用することは耐えがたく、見た目と名前の不一致により本人確認などでも大きな支障が出ている状態です。
今後、性同一性障害の治療を予定しているため、今よりも名前による支障が出てしまい改名の必要性も高くなります。
改名する名前は通称名として●年から使用しており、家族・職場・友人などに広く認知されています。
改名への周囲の理解もあり望みの性別で過ごすこともできており、改名による社会的混乱は生じないと考えられるため、戸籍の改名を望んでいます。
後述している実際に改名が許可された理由の書き方をみても、同じような内容でまとめられています。
改名の申立書の書き方は箇条書きでもいいですし、伝わりやすい文章で改名が必要な理由やその経緯まとめましょう。
性同一性障害の改名で申立書にある申立ての理由の欄は「その他」を選択し、「性同一性障害」「性別違和」と記載します。
性同一性障害で許可された改名事由の書き方の具体例
実際に性同一性障害・性別違和で改名を申立て許可された方の具体例をまとめています
ノンバイナリーで改名許可された申立書の書き方
うつ病の精神疾患を持ち、その後性同一性障害の診断を受けた戸籍が女性のノンバイナリーの方です。
性自認は男性でも女性でもなく、ノンバイナリー(無性)で、胸の縮小手術を予定されているそうです。
申立人は、幼少期より戸籍の性別と自信の体に齟齬を感じており、20歳から心療内科の受信を開始・その際に「うつ病」と診断されました。そして29歳のときに、性同一性障害の診断を受けました。性自認はノンバイナリーで、男性になりたいと思ったことは一度もありません。しかしながら「女性の身体」にも馴染めず、「女性」として扱われる度に心的外傷を負ってきました。下半身よりも上半身への性別違和が特に強く、来年2月にタイの〇〇病院にて乳房縮小手術を予定しております。
現在の「女性らしい」戸籍名を見る/書く行為には、自分が「女性」であることを意識させられるため、甚大な精神的苦痛を感じます。そのため、手術の渡航に必要なパスポートを発行するまに、中性的な名前である「チカゼ」に変更することを希望します。上記の理由により、、名の変更を申立いたします。
(備考)
具体的な性自認は、「無性」に限りなく近いです。心に「男性」性と「女性」性を一滴ずつ保有していると捉えています。女性から男性/男性から女性へのわかりやすいトランスジェンダーではないものの、申立人も確実に女性から無性へのトランスジェンダーです。
>>ノンバイナリーでも改名は可能!すべてのトランスジェンダーが改名を成功される方法とは?【その1】
FTMの改名が許可された申立書の書き方
性同一性障害の診断書を持ち、すでにホルモン療法での治療を受けているFTM(女性→男性)の方です。
改名が許可された時の書き方とほぼ同じ内容です。
申立人は、幼少期より自身の性に違和感を感じ、◯才よりカウンセリングを受診しています。
そして、◯才に性同一性障害の診断を受けました。(診断書添付)
現在はホルモン療法を実施し、見た目を自認する性に近付け、日常生活では「男性」として過ごしております。
しかし、現在の女性的な名前では、本人確認の際に見た目と名前が異なるため、日常生活を過ごす上で支障をきたします。
その都度、自身の事情を説明することで、苦痛を感じることもあります。
そのため、◯才より使用している通称名○○を、戸籍上の名として正式に使いたいと強く願います。
上記の理由より、名の変更を申立ていたします。
>>【改名】理由の書き方「性同一性障害当事者向け」テンプレート付き
改名と性別変更を同時に申請し許可された申立書の書き方
改名と性別変更を同時に申立てたFTM(女性→男性)の方の申立書の改名理由の書き方です。
同時の申立てなので文章が長くなるため、申立書には別紙参照と記入しご自身で作成されたようです。
[別紙]1枚中1
●●●●【←改名前の本名】「名の変更を必要とする具体的な事情」
1. 申立人は、3歳頃から自分の性別に違和感を覚え始め、第二次性徴に伴う身体的変化に激しい苦痛を抱いた小学校高学年以降、「性自認は男性、しかし産まれ持った身体は女性」というギャップと不自由に長い間苦しみ悩まされ続けて参りました。2.そこで22年間勤めた教職を辞し、令和2年●月から【お世話になった医院名】へ通い始め、令和3年●月に性同一性障害と診断されました。同時に精神的サポート及びホルモン療法を開始し、令和2年●月には乳房切除、令和3年●月には性別適合手術を受けました。
3.申立人は、すでに3歳頃には父がつけたあだ名「ゆうき」と呼ばれることを喜び、逆に女性名の「●●」という本名を呼ばれたり目にするたび、強い苦痛を感じて参りました。また、このたびの一連の治療を通して「たくさんの方々に助けて頂いて成り立っている自分」を強く実感しました。よってこのことを決して忘れず、今後は皆様にご恩返しして参るべく、「助ける、報いる」という意の「侑」をあてて「侑器」(ゆうき)と改名したく存じます。
4.現在、家族や周囲には完全に男性として認識されており、名前も通称として「●●【←名字】侑器」を使用しています。この 「yuki」という名の入ったメールアドレスを旧職場でも長年愛用したため、周囲にも大変なじみのある名です。
なお、申立人は現在無職・未婚で、子もおりません。従って改名による社会的混乱が生じる恐れはないと考えます。【←原文は赤や下線はなし】
5.申立人は、このように外見も中身も全く男性なのに、戸籍や保険証等の記載だけが「女」、さらに女性名のままであるため、見た目や低音の声との不一致により、病院等各所で本人確認を受ける際にしばしば混乱とご迷惑を招くなど、社会生活上極めて苦痛かつ不便な思いをしています。また目下そのため就職活動を開始できず大変困っています。
6. したがって、早急に名の変更のご許可を賜りたく、先月末日の診断書発行を受け早速、「名の変更」および「性別の取扱の変更」を申立てさせて頂く次第です。
ご許可頂きましたあかつきには、市役所には先に「性別の取扱の変更」を届け出、その処理が終わりましてから「改名」の手続きをし、必ず市役所のご担当さまのご面倒にならぬよう配慮致しますことをお誓い申し上げます。
「備考」
農業で地域の皆様のお役に立って参りたいと考えています。そのため早急に改名と性別変更の手続きを終え、一刻も早い社会復帰=来春4月からの就業を切望しております。就職活動の都合上、できれば年内にもご許可を賜りたく、どうぞよろしくお願い申し上げます。
性同一性障害の改名は許可されやすいがノンバイナリーは難しい?
一般的に性同一性障害や性別違和として、手術をして性別を変えるというのは認知されつつあります。
そのため家庭裁判所の許可が得られやすい面があります。
しかし、ノンバイナリーで性別違和があっても性自認がどちらでもないという方の改名は、難しい面があるかもしれません。
ノンバイナリーは性同一性障害や性別違和と比べて認知度が低いからです。
家庭裁判所に理解してもらうために、診断書や申立書にある改名理由の書き方がより重要になるでしょう。
性同一性障害についてWHOの総会で「精神障害」の分類から除外され、病名も「性別違和」へと変更されています。
今や性同一性障害は脱病理化が進んでいますが、もしかすると診断書が不要になる未来が来るかもしれませんね。
許可される性同一性障害の改名理由の書き方のまとめ
性同一性障害や性別違和で改名する場合、性別違和とともにどのような支障が出ているのかを書きます。
ネット上に改名が許可された方(性同一性障害)の書き方がいくつかでているのでご自身でも調べてみてくださいね。