日本の家庭裁判所では実際にどれだけ申立て件数があるのか、許可される確率があるのかは気になる部分だと思います。
実は全国の家庭裁判所の改名の申立て件数は公開されています。
しかも、申立ての件数だけでなく、許可の件数、却下の件数などの細かなデータもあるんですよ!
家庭裁判所で扱った過去の改名の申立て件数や却下された件数などをもとに、年代別に改名が許可される確率を算出してみました。
ここでは、毎年、日本ではどれだけの人が改名しているのか、年間の件数や許可される確率と考察をまとめました。
年間の改名の申立て件数と許可される確率
家庭裁判所が公表しているデータ(司法統計年報)をもとに、過去の一部や現在公開されている年代の改名の申立て件数と許可される確率を表にまとめました。
| 年度 | 既済総数 | 認容 | 却下・取り下げ | 確率 |
|---|---|---|---|---|
| 平12年 | 8351 | 6302 | 2040 | 75.5% |
| 平17年 | 8485 | 6540 | 1928 | 77.1% |
| 平27年 | 7502 | 5078 | 1876 | 67.7% |
| 令元年 | 6470 | 4510 | 1909 | 69.7% |
| 令2年 | 6006 | 4238 | 1709 | 70.1% |
| 令4年 | 5744 | 4146 | 1548 | 72% |
| 令6年 | 5129 | 3572 | 1502 | 69.6% |
改名の既済状況(総数、認容件数、却下件数、取り下げ件数)のデータをもとに、許可される確率を表にしています。
却下と取り下げの件数は合算しています。
家庭裁判所で改名が許可される確率
家庭裁判所の改名の申立て件数や却下の件数など、確認できるデータは2000年(平成12年度)まで遡れました。
2014年までは許可率は70%台を維持しており、そこから直近まで(2021年)70%前後にとどまっています。
裁判所の司法統計だけを見ると、ここ数年の改名の成功率は少し下がっていて6割~7割の方が許可されるという結果です。
過去10年分の平均を見ると、毎年許可される件数(容認件数)が約4700件、取り下げや却下の件数が約1600件あります。
決して改名が許可されるのは超難関というわけではないですが、簡単ともいえません。
後述していますが、この数字だけを当てにできないのです。
改名の申立て件数は約5000件前後
数字だけを見ると、過去10年の家庭裁判所への改名の申立て件数(総数)は、多い年で7000件超えですが、ここ数年は5000件ほどにまとまっています。
それでも改名の申立て件数が5000件って結構多い件数です。
この件数は少なくとも一日13人以上が改名を申立てていることになります。
改名の件数はかなり多いですよね。
データにある改名の件数は、取り下げ・却下・許可・受理の件数だけで、改名を申請したけど受理されていない件数は含みません。
改名は家庭裁判所に申請すら受理されなかったという場合もあるので、不受理を含めると実際の改名の申立て件数(希望者)はもっと多いかもしれません。
申立ての件数や許可の確率は下降気味?
全体的に改名の件数を見て気になったのが、家庭裁判所が許可する確率と申立て件数の減少です。
改名の許可率は初回の数字ではない
表では省いていますが、2000年~2014年までの改名の許可率は75%前後、少なくとも70%台を維持していました。
その後は70%前後をウロウロ。
70%という数字だけを見ると、改名の成功率は低くないように思います。
ですが、改名許可の確率はその年の許可された件数や却下された件数から算出したものです。
決して1回目の申立てで家庭裁判所から許可される確率ではありません。
1回目の申立てで許可された方もいれば、2回目、3回目でようやく許可された方も混ざっている数字です。
初回の申立てで家庭裁判所が許可する確率は、70%よりも低いかもしれません。
許可されやすいケースが成功率を上げる
この70%という許可率には、ほぼ許可されるケースも影響します。
たとえば、性同一性障害者の名の変更、外国人に関する名の変更も混ざっています。
これらの比較的簡単なケースを除外して名の変更の許可率を算出すると、実際の成功率よりも低い数字になる可能性が高いため、通常の改名の難しさは統計の数字以上に高いと考えられます。
実際に令和6年の戸籍の性別変更の許可率は以下です。
| 年度 | 既済総数 | 認容 | 却下・取り下げ | 確率 |
|---|---|---|---|---|
| 令6年 | 1345 | 1293 | 31 | 96.1% |
全ての性同一性障害の方が改名していたり許可されるわけではないですが、改名していると仮定してみます。
「性別変更に伴う名の変更」の事案を除けば、通常の「やむを得ない事由」に基づく改名申立ての許可率は約60%(令和6年)にまで下がります。
改名件数:5129件-1345件=3874件
記名許可件数:3572件-1293件=2279件
許可率:60.2%
統計上の許可率は、性別変更などの高許可率の事案によって押し上げられている面があります。
改名だけでなく、今後は2024年の法改正により、名前の読み方の変更も困難になります。
改名の申立ての件数について
改名が許可される確率は20年以上前と比べると下がっていますが、家庭裁判所への申立て件数も減少傾向です。
2010年(平成22年)くらいまでは、申立て件数(既済総数)は、多くて9000件以上、少なくても7000件以上ありました。
2010年を境に7000件前後に落ち着き、その後も大幅に増えることはなく、ここ数年は5000件台です。
改名の申立て自体が通らず不受理になる方もいるので、その場合はカウントされません。
家庭裁判所に許可されるかどうかの前に、申立てのハードルが高くなっているということもあるでしょう。
たとえば、改名の申立ての必要書類で定番となっている「通称名の使用実績」を作ることも難しくなっています。
許可される確率から改名の成功は難しいのか?
日本では改名は難しい部分があるので、決して楽ではありません。
改名が許可される確率だけをみると6割~7割なので、意外と低くないですよね。
ですが、改名が許可される絶対的な基準がそもそもないので、難しいと言わざるをえません。
最終的に家庭裁判所の裁量になるため、あまりこの許可される確率の数字に期待しないほうがいいかも・・と思います。
それに一回目の申立てで許可された確率ではないですしね。
これまでの相談者さんをみても、許可される確率はそれほど高くないです。
ただ、家庭裁判所のデータを見ると、毎年それなりの件数が許可されていることがわかります。
つまり、改名は条件を満たして正しい知識があれば、ちゃんと許可されるということです。
まずは改名が許可される条件をしっかり理解することが大切です。
ちなみに、韓国では「改名は原則に認めなければならない」という、2005年の最高裁の判決によって、日本とは違い改名の条件がかなり緩くなっています。
「運が悪いから」といった理由でも許可されており、改名の許可率はほぼ100%。
危うさを感じますが、うらやましい気持ちもありますね。
昭和の改名の申立て件数
少し気になったので、昭和の時代は改名の申立て件数がどれくらいあったのかを調べてみました。
昭和の申立て件数
- 昭和24年:9276件
- 昭和30年:10492件
- 昭和40年:12143件
- 昭和50年:10410件
- 昭和60年:9362件
平成の申立て件数
- 平成7年:8162件
- 平成17年:8301件
- 平成25年:7054件
- 平成26年:6720件
- 平成27年:7062件
- 平成28年:6341件
- 平成29年:6294件
- 平成30年:5986件
令和の申立て件数
- 令和元年:6524件
- 令和2年:6082件
- 令和3年:5958件
今確認できたデータを見ると、昭和40年頃が最も改名の申立て件数が多いようです。
その後は右肩下がり、平成も令和も改名の申立て件数は1万を下回り、6000件前後と昭和の半分に・・!
この数字は総数なので表でまとめている既済総数(繰越分込み)とは別です。
家庭裁判所で改名の申立て件数と許可される確率のまとめ
改名が許可される確率は低いというわけではありません。
しかし、年々、許可される確率が低いこと、そして改名の申立て件数も減っていることは気になります。
今後、今以上に許可が厳しくなる可能性も考えられます。
改名するなら早めに準備したほうがいいでしょう。