前科や前歴などの犯罪歴がついてしまい、ネットの書き込みや記事などで実名や犯罪の情報が公開されると実生活で多大な悪影響があります。
たとえ不起訴になっても、一度でもネット上に犯罪歴があがってしまうと大きな不利益を受けてしまうことがあります。
過去の犯罪歴がネット検索でいつまでも表示されていると、いくら人生をやり直そうと努力しても厳しくなります。
前科や前歴などの犯罪歴が理由で「いっそのこと改名したい」と考える人もいるでしょう。
そこで、前科や前歴などの犯罪歴がある場合の改名についてまとめました。
犯罪歴がある場合の改名が許可された事例や却下された事例をもとに、改名できる理由や事情についてご紹介します。
また、改名以外の方法として、ネットで拡散された前科や前歴の影響を最小限にする方法があるので解説します。
前科前歴などの犯罪歴を理由した改名はできない
前科や前歴などの犯罪歴があると改名は許可されにくい面があります。
前科・前歴・逮捕歴は改名と関係ない
犯罪歴は一般的に解釈が広く、一般的に使われている言葉で、犯罪歴には前科・前歴・逮捕歴の意味が含まれています。
このような犯罪歴(前科・前歴・逮捕歴)の改名ですが、たとえ前科や前歴などがあったとしても、改名できないということはありません。
改名は前科や前歴などの犯罪歴の有無は関係ありません。
これは改名の条件が「正当な事由」であり、「戸籍の名前によって生活する上で重大な支障がある」ことだからです。
前科や前歴があると職業や資格取得に制限が出ることがありますが、改名の許可条件とは無関係です。
前科・前歴・逮捕歴の意味と違い
前科・前歴・逮捕歴は意味が似ているため、これらの意味や前科と前歴の違いについて少し解説します。
前科・前歴・逮捕歴の意味と違い
- 前科の意味
- 前歴の意味
- 逮捕歴の意味
前科は有罪判決を受けた履歴があること
前歴は逮捕や検挙など被疑者として犯罪捜査を受けたこと
逮捕歴は逮捕された履歴のこと
前科とは裁判で有罪判決が確定することで前科がつき、不起訴となった場合は前歴や逮捕歴がつきます。
前歴は逮捕や検挙など、被疑者として犯罪捜査を受けたことをいいます。
逮捕=前科ではなく、逮捕歴は前歴の一部に含まれ、前科と前歴の違いは裁判で有罪判決を受けたかどうかです。
前科を意味する有罪判決には、懲役・禁錮・罰金・拘留・科料などが含まれ、刑の免除や執行猶予付きとなった場合も前科がつきます。
前科や前歴の犯罪歴を理由に改名はできない
後述している犯罪歴がある場合の改名の事例をみるとわかるのですが、「犯罪歴を隠したい」「前科や前歴がバレないようにしたい」といった改名の理由では裁判所に却下されてしまいます。
犯罪歴だけを理由とした改名は「正当な事由」とは判断されないのです。
法律上、犯罪歴は改名の条件と直接関係ないですが、犯罪歴だけを理由にした改名は許可されないということです。
犯罪歴で改名が許可・却下された事例
改名に前科や前歴の犯罪歴の有無が関係ないとはいえ、裁判所で犯罪歴がある場合の改名が許可されるかどうかは別です。
実際に犯罪歴がある場合の改名で、どのような理由や事情があるのでしょう。
前科や前歴などの犯罪歴の改名で許可された事例と却下された事例をご紹介します。
犯罪歴の改名で許可された事例
暴力団の報復に恐れる捜査協力者の氏と名の変更を許可した事例
数年前に通称使用していた氏名への変更を「長年通称として使用していた」として申し立て、氏の変更は取り下げ、名の変更が許可された
男性は過去に暴力団に関係するグループに長期間所属しており、とある事件の捜査に協力し逮捕にこぎ着けた
所属していたグループや暴力団関係者には氏が知られていたことから、昨年、改めて氏の変更を家裁に申し立てた
gooニュース
指定暴力団から8年前に脱退した40代男性が、経営する会社の口座開設ができず、暴力団員などを登録するデータベースに名前が残っているためだとし、社会生活への支障を訴えて許可された事例
平成28.10.19
朝日新聞
犯罪歴を理由にした改名は許可されにくいですが、「戸籍の名前を使用することで著しい支障が出ている」場合は許可されます。
事例にあるように、「名前によって生活に支障が出る」という重大な改名すべき理由があれば認められます。
他にも、通称名を長期的に使用することで、名前の改名が許可される可能性が高くなります。
前科や前歴などの犯罪歴があって、「正当な事由」となる改名すべき理由がない場合は、時間はかかりますが通称名を使用したという証拠(使用実績)を作って「永年使用」を理由に改名を申し立てるのが最適だと思います。
犯罪歴の改名で却下された事例
犯罪者が、その縁戚者に及ぼす不名誉を覆うための改名の申立てが不許可とされた事例
犯罪者がその縁戚者に及ぼす不名誉を出来るだけ軽減しようとする心情は、それとして理解しえないこともないが、そのような不名誉を覆うために改名の手段に訴えることは、名の社会的意義からし名されぬと解するのが相当である
大阪高等裁判所/昭和37.2.15
単にに前科の汚名を受けた姓から解放されて心機一転して更正したいという理由だけでは、改姓は認められないとした事例
東京家庭裁判所/昭和41.7.18
改名する理由が犯罪歴の清算や、前科や前歴などの犯罪歴を隠すためだけの理由と判断された場合、却下された事例のように「正当な事由」があるとは認められない傾向です。
犯罪歴を理由とした改名の中に、前科や前歴から離れて更生するという目的があります。
このような改名の場合メリットもあればデメリットもあり、どちらかというとデメリットが優先される傾向です。
犯罪歴による改名のメリット
- 社会復帰や更生の促進
- 犯罪歴による改名のデメリット
- 周囲に誤解を招く
- 前科の照会ができなくなる
- 悪用のリスクがある
(訴追を免れる)
犯罪歴を理由に改名することについて、申立人のメリットよりも、社会的に支障が出るデメリットが考慮されます。
余談ですが、2017年に愛知県で女児にわいせつな行為をしたとして逮捕された講師が、他県でも処分されており、実は5回目の逮捕だったというニュースがありました。
この講師は「就職のために改名」しており、学校は気付かずに採用したのかもしれませんね。
過去の犯罪歴を反省して、心から更生するために改名したいという方もいると思いますが、あらゆるリスクを考慮して裁判所の判断は厳しい現状があります。
ただ、犯罪歴による改名で却下された事例は「前科や前歴などの犯罪歴があること」を否定しているわけではありません。
改名の許可に値する「正当な事由」がないと判断された結果「却下した」ということですので、誤解のないようにしてくださいね。
改名ではなく氏の改姓のみも可能
前科や前歴などの犯罪歴を理由にした改名が許可された事例の中に、戸籍の名前と氏の変更の両方を変えた事例がありますが、氏だけの変更も可能です。
元暴力団構成員(組幹部)で,暴力団から離脱して建設塗装業を営んでいる男性が,元暴力団員の氏として周知されているため事業の運営や更生への障害になっていることを理由として氏の変更許可を求めた事例において,「暴力団関係者との関わりを持つ契機となる現実の危険を少しでも除去するために氏を変更したいとするものであって,その意図は真摯なもので更生意欲の現れと見られ,今後暴力団関係者からの不当な関わりを断って正業に勤しむために,氏変更の必要も認められる」として,戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」があると認めた事例
宮崎家庭裁判所/平成8年8月5日審判
改名の条件は「正当な事由」で、氏の改姓は「やむを得ない事由」が条件です。
改名も改姓も「生活する上で重大な支障があること」が条件ですが、氏の改姓は「基本的には許可しない」とう意味合いがあります。
名前の改名よりも氏の改姓の方が難しいですが、改名と同様に「長期的な通称の使用」によって誰でも氏を改姓できる可能性があります。
許可される通称の目安期間
- 名前の通称は5年~10年程度
- 氏の通称は10年程度
養子縁組や結婚で氏が変更できる
早く名前を変える方法として、氏の変更があります。
この場合は養子縁組や結婚での氏の改姓です。
裁判所の許可が不要なので簡単に思えますが、一人ではできないのでハードrが高いかもしれませんが。
パートナーや親類などに理解者がいるなら検討してみてはいかがでしょうか。
前科や前歴で改名する前に削除も検討しよう
実名報道の影響で改名を検討されている方もいるかと思いますが、改名する前にインターネットで拡散された犯罪歴の削除を試す方法もあります。
前科や前歴などの犯罪歴は警察・検察・本籍地の市区町村で保管されるため、削除することができません。
犯罪歴の記録は公表されるものではないので、日常生活に何の影響もありませんが、インターネットとなると別です。
インターネットを使えば、名前を検索すると犯罪歴を簡単に調べることができます。
逮捕されたり犯罪を犯して実名報道されると、その影響は計り知れません。
実名報道の影響
- 信頼が失われる
- 再就職先が見つからない
- 結婚が難しくなる
- 家族や知り合いに被害が出る
- 賃貸が借りられない
ネット上に前科や前歴の犯罪歴が残ると、怖がられたり偏見がある人もいるので、信頼を築きにくくなる
ネット検索で過去の犯罪歴が知られてしまい、一度決まった就職が取り消されることもある
当人同士に問題がなくても前科や前歴があると相手側の家族が反対し、諦めざるを得ない状況になることがある
本人だけでなく家族も犯罪者扱いされ差別や偏見を受けてしまう
逮捕歴や前科・前歴があると審査が通らず自分名義で借りられないことがある
ネット上に公開された実名・犯罪歴・誹謗中傷などでお困りの場合は、いきなり改名ではなく、削除することで大幅にダメージを軽減できます。
本人や家族などの誹謗中傷の投稿記事や書き込みは削除できる可能性が高いです。
削除依頼は対応してもらえるかはわかりませんが、ネット上にある書き込みや記事を見つけたら、その投稿者や管理会社に、直接、削除をお願いしてみましょう。
削除できれば、もしかすると、犯罪歴のせいで改名する必要がなくなる可能性もなきにしもあらず。
前科・前歴・逮捕歴の改名のまとめ
犯罪歴を理由とした改名は、改名による社会的な支障が考えられます。
改名の理由にもよりますが、改名による更生のメリットが優位にならないようです。
基本的に改名はバンバン許可されるようなものではにですが、改名の理由が前科・前歴など犯罪歴となると、裁判所の改名の判断はとても慎重にならざるをえません。
また、新聞社などネットニュースの記事はある程度、期間が過ぎれば情報が削除されますが、個人サイト、SNS、掲示板など、一度ネットにあがってしまった情報は半永久的に残り続けます。
そして、その不利益も半永久的に続くということ。
決してネット上から犯罪歴を削除できないわけではないですが、どんな情報も完璧に削除することは困難です。
前科や前歴などの犯罪歴だけでなく、事実無根の情報がネット上に蔓延すると、更正してちゃんと生きている方にとってはとても耐えられないことだと思います。
そういったネット被害を防ぎ、自分に不利益が出ないように対処する方法は、
- ネット上の削除依頼をする
- 戸籍名を改名する
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この2つしか方法はないのかな、と思います。
犯罪歴で改名するなら、通称名の永年使用による改名が最も改名できる可能性が高いです。
改名は何回でも可能なので、根気強く申し立てましょう。