DVには、殴る蹴るなどの身体的暴力、生活費を入れない、侮辱、脅しなどの精神的暴力やモラハラなどがあります。
暴力などのDVが理由で、離婚をきっかけに改名を希望することがあります。
離婚を理由に改名したい!もしくは子供の改名をしたい!(親子で改名したい)という方もいるでしょう。
単に離婚したことが改名の理由として認められることはないですが、離婚の原因や離婚後の生活状況によって変わります。
また、DVで離婚した場合、たとえ離婚をしても元夫や元妻からDV被害を受けることがあり、これでは安心して生活ができません。
日常生活を平穏に暮らせず、必要に迫られて改名を希望する方もいます。
ここでは、DVや離婚を理由とした改名に関して、許可してもらうために重要なポイントや、役立つ手続きをご紹介します。
離婚後に旧姓に戻したい、苗字を改姓したいという方もいると思いますので、改姓する方法についてもまとめています。
DVや離婚を理由に改名できる?
大人も子供も改名の許可条件は「正当な事由」があることです。
「正当な事由」があれば、暴力やモラハラなどのDVが理由で改名をしたり、離婚後に子供やご自身の名前を改名することができます。
「正当な事由」とは、戸籍の名前を使用することで、社会生活で甚だしい支障が出てしまう場合に該当します。
戸籍の名前による不都合や弊害があれば、暴力やモラハラなどのDVや離婚を理由に改名することができるのです。
DVが理由の改名は許可されやすい?
改名は、通称名を何年間も使わないとできないと思っている方が多いのですが、それは改名理由によります。
どんな理由でも通称名の使用期間が長い方が認められやすい傾向ですが、短くても許可されることがあり、その一例としてDVが当てはまります。
改名理由がDV被害の場合、緊急性が高ければ高いほど早期に許可される確率が高いと言えます。
なぜなら、DVによってまともに日常生活を送れないだけでなく、命を脅かすこともあるからです。
自分や子供の命を守るために、戸籍の名前の改名が防犯上必要になります。
改名は「正当な事由=日常生活に重大な支障がある」ことが条件なので、そのような状況は誰が見ても重大な支障に当てはまりますよね。
DVといってもどの程度のものなのか、また、人によって置かれている状況が違うので、確実なことは言えないのですが、DV被害が深刻であれば短期間で許可が下りる可能性があります。
苗字の改姓も可能
人によって、DVや離婚を理由に戸籍の名前を変える改名ではなく、苗字を旧姓に戻したり、改姓(苗字変更)したいという方もいると思います。
後述していますが、苗字を変える改姓や旧姓に戻す場合の条件は「やむをえない事由」があることです。
名前を変える改名とは条件が少し変わるのですが、苗字を旧姓に戻したり、苗字を変える改姓も可能です。
つまり、名前だけを変える改名も、旧姓に戻したり苗字だけを変える改姓も、名前も苗字も全て変えることもできるのです。
DVや離婚で改名が許可される理由
DVや離婚を理由にした改名について、具体的にどのような事情があるのでしょう。
許可される理由や事情をご紹介しますので、あなたの改名したい理由が当てはまるか確認してください。
もし、「改名が許可される理由なのか判断できない」など疑問がある方は「お問い合わせ」からご相談くださいね。
DVや離婚で改名が許可される理由
- 犯罪者と離婚
- 暴力やモラハラなどのDV
- ストーカー被害を受けている
- 離婚した親の名前から改名したい
犯罪者との離婚
- 配偶者が犯罪者になってしまった
- 配偶者が犯罪者だった
DVでケガを負わせて逮捕ということもありますが、夫や妻が犯罪者であることを理由に離婚した場合の改名はどうなるのでしょう。
今はネットが発達しており、SNSなどの影響で簡単に名前や住所などの身元が拡散されてしまいます。
ネットの影響は恐ろしいので、広まったな名前によって差別の対象となったり、誹謗中傷を受けることもあります。
離婚をしても戸籍の名前を改名しなければ被害を受け続ける、こう言った理由があると許可される可能性があります。
暴力やモラハラなどのDVで改名
- 無数の嫌がらせメールや着信がかかる
(着信拒否をしても別の電話からかけてくる) - 共通の友人に嘘をついて名誉を傷つける
- SNSやネット掲示板などを利用してリベンジポルノを行う
- 酷い暴力やDV被害を受けていてトラウマがある
- DVを行っている交際相手から身を隠したい
DVは社会的暴力、肉体的暴力(性的)、経済的暴力などがありますが、暴力やモラハラが理由で離婚するというのは年々増加傾向です。
DVという言葉やDVによる離婚について、社会的な認知度が高く、調停や裁判を取り扱う家庭裁判所はそのあたりの事情をよく把握しています。
職業によって名前を公表しなければいけない場合もあると思いますが、DVによってより危険性が高くなる、被害が大きいという状況は許可されやすいです。
DVや暴力から逃れる以外に、DVが理由で離婚をしたがトラウマを抱えていてまともに生活できない、交際相手のDVから逃れたい、このような事情も改名理由として許可される可能性があります。
離婚後にストーカー被害を受けている
- 職場で待ち伏せをする
- 家に押しかけてくる
- SNSなどネットストーカー
- 無言電話を繰り返す
- 復縁を迫る
ストーカーと聞くと若い女性のイメージがありますが、離婚後に元夫や元妻がストーカになることも多いです。
婚前にモラハラな言動を繰り返していたり、暴力を振るっているなどのDVがあると、ストーカになりやすいようですね。
ストーカーはブログなどに脅迫的な内容を書き込む、SNSで追跡するといった、ネットのストーカー被害もあります。
ときに命を落とすような悲惨な事件を招くことがあり、いつ直接的に被害を受けるのか、毎日怯えながら生活している方もいます。
このように、DVによって危機的状況や精神的に追い込まれて、今の名前のまでは日常生活がまともに送れない状況にあれば許可されやすいでしょう。
交際相手からストーカーを受けている、という場合も改名が許可される可能性があります。
ストーカー被害は警察が積極的に動くことが難しく、ストーカー被害の対策も困難です。
名前が相手に知られていることで日常生活で大きな被害が出てしまうため、ストーカー被害を理由にした改名は正当な理由となります。
DV離婚で子供の名前を改名したい
- DV離婚したが子供がまともに生活できない
- DVの後遺症で子供が精神疾患を患っている
- 過去のトラウマにより名前が使用できない
DVや虐待など、離婚後に親が改名するだけでなく、子供の改名を希望するケースもあります。
例えば、深刻なストーカー被害を受けていて、子供も常に危険にさらされているといった改名理由。
また、暴力やモラハラなどのDVを受けた過去のトラウマから、子供や自分が戸籍の名前を使うことで精神的苦痛を受けている、元夫や元妻が命名した名前を使用し続けるのが困難などの理由があります。
子供の改名で、DVや借金などが理由で離婚した両親がいて、親の言動に問題があったり、家族と絶縁したい、といった改名理由もありますね。
被害が明確であれば、子供の改名は意外と申請が通りやすい理由と言えます。
DVで改名が許可されるために措置を受けておこう
今すぐに改名が必要だという差し迫った状況としてDVを強調するなら、その状態をしっかり説明できるようにしておくと効果的です。
暴力行為やモラハラなどのDVで離婚(離婚予定)を理由に改名が許可されるために「やっておくべき手続き」があります。
- DVやストーカー被害を受けていることを警察に相談する
- DVを理由に役所で住民票の閲覧制限の支援措置を受ける
これらの手続きはDVなどを理由にした改名が許可されるために重要ですが、DVなどからご自身の身を守るために検討されている方やすでに行っている方もいると思います。
これらを行っていれば、改名の申請時にあなたのDV被害の状況を説明しやすくなるので、上記の手続きを進めながら改名の準備を行うのがいいでしょう。
支援措置を受ける前に警察へ相談
自治体によりますが、DVなどを理由に支援措置を受けるためには、警察へまずは相談して許可をもらう必要があります。
DVやストーカーなど警察に相談する場合は、、被害の状況に応じて被害届を出すことも検討しましょう。
警察や役所にDV被害を相談していても特別な対応はなく、相談だけで終わることもありますが行動に移すことに意味があります。
何もしないより、実際に行動しておくことで、DVを理由にした改名申請で役に立つからです。
DVなどの被害を警察へ相談したという事実があれば、そのことを改名理由として申立書に書けるし、申し立ての時に裁判所(審議官)に危機感や緊急性を強く訴えることができます。
たとえ支援措置を検討していなくても、警察や役所への相談歴はあったほうがいいでしょう。
役所で支援措置の手続きを行う
支援措置は、DVなどの加害者から住民票や戸籍の取得・閲覧を制限できます。
支援措置のメリットとデメリット
- メリット
- デメリット
加害者から住民票が記載されている公文書(住民基本台帳の一部の写しの閲覧・住民票(除票含む)・戸籍の附票の写し)の交付や閲覧を制限(拒否)できる
戸籍などの取り寄せが面倒になる
債権者や弁護士など職務上の請求は可能
支援措置を受けると、閲覧制限のある書類は、本人や同一世帯(配偶者や子供)以外は委任状があっても請求できなくなります。
マイナンバーカードでコンビニ発行も利用できなくなるので、取り寄せがやや面倒になります。
支援措置の条件
(1) 配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者であり、かつ、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある方
(2) ストーカー規制法第7条に規定するストーカー行為等の被害者であり、かつ、更に反復してつきまとい等をされるおそれがある方
(3) 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待を受けた児童である被害者であり、かつ、再び児童虐待を受けるおそれがあるもの又は監護等を受けることに支障が生じるおそれがある方
(4) その他(1)から(3)までに掲げる方に準ずる方
総務省ホームページ
完璧に住所を知られないようにするのは難しいですが、配偶者や元夫元妻から、DVやストーカー行為などの被害を受けている方が対象です。
支援措置の手続きは役所で行いますが、DVなどの相談先は警察や支援センターなど、各市区町村によって異なるので、どこで相談するのかを確認してください。
役所によって、役所が用意した書類をもって警察署へ行き書類を書いてもらう必要があります。
DVで改名を許可する方法のまとめ
- 改名理由に正当性があることを伝える
- 暴力などのDVや改名理由に合った証拠を用意する
(深刻な状況や緊急性が高いほど許可される改名理由となる)
市役所で受けた閲覧制限措置の決定通知書のコピー
警察の相談歴のコピー(開示請求して得た書類)
暴力行為などのDVやストーカー被害によって、改名しなければあなたや子供が普通に生活できない、日常生活を脅かすほどの緊急性があれば、改名は許可されやすいです。
必要に迫られて改名しなければならない状況ですから、改名理由に正当性を与えます。
それでも、どんな状況であれ、改名理由の正当性を明確にするためには証拠が重要になります。
戸籍の名前では生活でどんな被害があるのか、改名することで防犯にどう役立つのかを訴えるだけでなく、効果的な証拠があれば許可もスムーズです。
改名前に役所で転籍手続きを検討しよう
DV被害から逃れるために改名したのに、その名前があなたの名前だと加害者に知られては無意味になってしまいますよね。
支援措置を受けていても、戸籍や住民票は、弁護士・司法書士など職務上の業務を遂行するために必要がある場合に請求できます。
転籍をしていても戸籍をさかのぼって閲覧すれば、改名したことがわかるので、完全にバレないように身分を隠すことは難しいです。
改名後の生活の不安(名前バレ)を少しでも減らすために、改名前に転籍しておくことは役立つひとつの手段です。
私の場合は、DVが理由で改名したわけではないのですが、改名後に分籍をして本籍地が変わりました。
改名手続き後に分籍や転籍で他の市区町村に本籍地が変わると、新戸籍(新たに設定した本籍地で発行される戸籍)が作られるため、新戸籍には過去の改名記録の一部(改名前の名前)が消えてわからなくなります。
転籍しても前の戸籍に改名記録が残りますが、本籍をたどられない限り、昔の名前を表面上は隠すことができます。
DVなどの被害がある場合は、改名後の名前がバレにくくするために、今の戸籍に改名した記録が残らないように先に転籍しておきます。
さらに、改名後に別の場所に本籍地を写して転籍すると辿られにくくなります。
転籍届を出すときに新本籍地の欄には、「現住所や今後の引っ越し先とは無関係の住所を書く」ことで、戸籍から引っ越し先の住所を調べづらくできます。
※ 転籍の手続きや、どのように改名記録が記載されるのか、戸籍の状態などに関しては、確実なことは言えません。
直接、役所にご相談の上、改名や転籍の手続きを行ってください。
転籍や改名などの手続きをしたら、どういう状態になっているのか、戸籍謄本(抄本)や住民票を発行して確認しておくといいでしょう。
離婚後に旧姓や改姓する方法
改名は「正当な事由」改姓は「やむをえない事由」が条件です。
苗字を改姓する条件
やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
戸籍法107条1項
改姓の「やむをえない事由」とは「社会生活において著しい支障をきたす場合」を指し、「そうするより他に方法がない状況」であれば許可されます。
しかし、名前は個人が使用しますが、苗字は一家全員で共有しているという事情があるので、よほどの理由がない限り苗字を改姓することができません。
全く別の苗字へ改姓するよりも、旧姓に改姓する場合は許可の判断が緩やかです。
苗字の改姓は難易度が高い
改姓理由は改名理由と同様に、「奇妙な名前」「難読・難解な名前」「永年使用(氏の通称使用)」で許可されたり、「虐待」により名前と苗字の変更が許可されたケースもあります。
許可された苗字
- 肴屋(さかなや)
- 大楢(おおなら)
鮮魚市場に努めており、姓により社会的混乱を招く
オナラを連想させる滑稽な姓である
改名も改姓も客観的に判断されるので、主観的な理由は却下されますが、苗字を変える改姓の方がより高度な客観性が必要です。
旧姓への変更は許可されやすい
旧姓に戻したい場合は、離婚後3ヶ月以内なら旧姓に戻して改姓できますが、その期間を越えてしまうと改名と同様に家庭裁判所で改姓の手続きが必要です。
改姓は許可されにくいですが、旧姓に戻す場合の改姓は許可される傾向です。
許可される理由として、あなたが家を継ぐことになった、職場を退職したなどがあり、離婚後数年経過していても旧姓に改姓できます。
養子縁組で改姓できる
改姓は申し立てをするだけでなく、親族などにお願いして、養子縁組する方法もあります。
養子縁組は、養親が成人(未成年の場合は婚姻していれば可)していること、目上の親族や年上は養子にとれない(自分より年下であっても叔父や叔母を養子にすることは不可)、などの条件がありますが、そこまで複雑ではありません。
手続きは市町村役場にて養親と養子がそろって必要書類を提出するだけです。
DVや離婚による改名のまとめ
DVが理由でも改名はできます。
なるべくDV被害がわかる証拠集めや、今の名前のままでは日常生活ができないことを説明できるように準備しましょう。
離婚を理由にした改名は子供も大人も不可能ではないですが、あくまでも、社会的に支障が出ていることが重要です。
個人の感情では改名は難しいのでご注意ください。